堀川りょう著:コラム第5回!
第2章・アニメ声優伝

はじめの一歩は児童劇団

ここで語っている「声優の道」という言葉には、二つの意味が込められています。
ひとつはここまでで示したような、「これからの声優が歩む道」。
そしてもうひとつは、僕がこれまでたどってきた――僕のみならず諸先輩方や今も一緒に仕事をしている声優仲間たちが、それぞれ極めてきた技術と方法、そして生き方までも含んだ「表現者としての道」。

この章ではこれまでの出来事を振り返りながら、僕の歩んだ道のりについて語りたいと思います。

僕は小学校低学年のとき、初めて芸能の仕事に携わりました。
母が、「アカデミー児童劇団」という大阪の劇団に僕を入団させたのがすべての始まりでした。 といっても、僕はそのことを記憶していません。
覚えているのは、当時住んでいた大阪府枚方市という町から大阪市内まで、京阪電車で通っていたこと。そのころの僕は電車に乗るのが楽しくて仕方なかったのです。
では電車目当てで仕事をしていたのかというと、そうとも言い切れません。
母が言うには、僕は芝居の稽古はもちろん、舞台もロケも、嫌がったことがなかったそうです。
子供は、大人のように我慢や無理をしないものです。嫌がりもせず素直にやっていたということは、きっとそれが「好き」だったに違いありません。
演じることとの出会いはきっと、僕にとって幸せなものだったのです。

当時出演したのは、ほとんどが時代劇でした。京都の太秦撮影所にも、しばしば足を運びました。
周囲のスタッフの言う通りに演技して、ほめられれば嬉しい。子供なりに「もっと認められたい」という気持ちを強く持つようになりました。
真冬の川へ飛び込むというきついシーンも、子供だてらにやってのけました。
唇をガタガタ震わせながらも、周囲のキャストやスタッフが「こいつ、根性あるなぁ!」と口々に言ってくれるのを、誇らしく感じたものです。
子供にこのような危険な演技をさせるのは、今なら許されないかもしれません。真夜中までロケに参加することもしばしばでしたが、これも考えてみれば法律違反です。
子供が、子供だからといって甘やかしてもらえる現場ではなかったのです。
優先されるのは大人の都合であり、大事にされるのは主役のスターさんです。

その是非はともかく、そういう現場が、僕は好きでした。 撮影所という非日常空間を、今でいう「テーマパーク」のように感じていたのかもしれません。
江戸の町並みや家屋のセットに入ると、本当にその時代に迷い込んだような感覚を覚えました。
その非日常空間で味わった高揚感や幸福感は、今なお、演じるときのベースになっている気がします。

演じる楽しさと、子供としての寂しさ

『水戸黄門』の第一代水戸光圀を演じた名優、東野英治郎さんとは、よく共演させていただきました。
母によると、「マコト(僕の本名)、大きくなったら俳優座に来いよ」などと、しょっちゅう声をかけてくださったそうです。
幼過ぎて、覚えていないのが悔やまれます。

松竹新喜劇を率いた藤山寛美さんにも、よく舞台に呼んでいただきました。
「喜劇の神様」のそばにいながら、その芸術をしっかり理解できる年齢に達していなかったのも、これもまた悔やまれることですが、仕方がありません。
しかし今でも、明瞭に思い出せることがあります。

稽古場では、クスリとも笑いが起きないのです。
藤山さんの舞台は、セリフも立ち位置も間も、一分の隙もなく調整され、緻密な計算に基づいて上演されます。
演じる側は、それを完璧に再現させなくてはならなりません。稽古に臨む俳優さんたちの顔は、真剣そのものでした。
そして、それをいざ舞台にのせるとー-割れんばかりの、爆笑の渦。
喜劇を作るとは、こういうことかと思いました。

緊張と高揚を同時に体験できる舞台は、僕にとってエキサイティングな場でした。
ドラマ撮影は、シーンごとにカットがかかり、その順番もストーリーの進行通りにはなりません。
しかし舞台は、上演するストーリーを、役者も舞台の上で追体験でき、しかも、それを観る人と共有できるのです。

その楽しさを知り始めた一方で、芝居以外のー-普通の子供としての生活では、失ったものも多くありました。
同じ団地で一番仲良くしていた子が、あるときからなぜかよそよそしい態度をとるようになったのです。 気になって問いただすと、「うちのお母ちゃんがな、お前としゃべったらいかんって言うねん」。 子役をやっているような子供は、学校にもまともに来ない。芸能界で派手な遊びや悪いことも覚えるだろう。
あそこの親は、子供に稼がせて生活してるんだーー。
というようなことを、言われたのだそうです。

これは、子供時代で一番傷ついた経験かもしれません。
芝居の世界で無邪気に楽しんでいた僕は、「普通の世界」から、思いもかけない敵意のまなざしを向けられたのです。
このとき彼になんと言い返したか思い出せません。泣いたか怒ったかも思い出せない。ただ深く傷ついたことだけが記憶に残っています。

しかし今思えば――あくまで今思えばだが、この経験もまた、演技の奥行きにつながったと思います。痛みというものは、表現をさらに深くするものです。 無邪気だった僕は、あのときから、「芝居」と意識的につながりだしたのかもしれません。
それは、「普通の世界」が思わぬ形で僕を傷つけたことをきっかけに拓かれた、新しい道だったのかもしれません。

10代で本格的に役者を目指す

中学生になって間もなくのころ、東京に引っ越しました。
その後もひきつづき、東京の撮影所に通って、いくつものドラマや芝居に出演しました。
将来を意識するようになったのはこの頃からでした。「芝居の世界で食べていけるようになりたい」という思いが、徐々に芽生え始めたのです。

とはいえ、「このジャンルをやりたい」という明確なイメージはまだありませんでした。
主に出演していたのは時代劇でしたが、現代劇にも興味がありました。舞台も好きですし、ドラマも好きでした。要は、演じることであれば何でも、関心がありました。 ただ、それぞれの「違い」を味わうようになったのは大きな変化だったと思います。

舞台の楽しさはとにかく、観客との一体感にあることです。 稽古中はとにかく辛くて、「もう二度とやりたくない」と思うほど苦心惨憺します。しかし舞台で、万雷の拍手に包まれると、すべて雲散霧消します。またこの喝采を浴びたいという思いで、新たな作品に向き合っていくのです。

一方、ドラマはまた違った面白さがあります。 先ほど話したように、ドラマは舞台のようにひとつのストーリーを順番に演じることはできません。
しかしそのぶん、シーンごとのやりとりが際立ちます。
こちらのセリフに相手が応える、それに反応するこちらをカメラがアップで追う。こちらもいい表情で応えようと思う。そんな細密さに惹かれていました。
ひとつのシーンでも、「カット割り」ならば一人で演技することになります。
役者にそれぞれカメラが寄り、別々にセリフを撮って、あとでつなぎ合わせる。役者は相手がいなくても演じなくてはならないわけですが、相手のリアクションや心情を想像して演じるのが、これまた楽しいのです。

そんな風にさまざまな表現形態の面白さを味わいつつも、当時は「アニメ声優」という道は全く視野の外にありました。
僕にとってマンガやアニメは演じるものではなく、完全に「読む、観る」
――つまり受け取り手として楽しむものだったのです。

幼いころから、電車の中で『週刊少年サンデー』や『週刊少年マガジン』を読みながら撮影所に通っていました。
お気に入りは手塚治虫の『どろろ』。人間の少年が、すべての肉体を妖怪に乗っ取られる話に総毛立ちつつ、続きが気になってたまりませんでした。 この話がアニメ化されたとき、原作のおどろおどろしさが少しトーンダウンされていて、どこか残念な思いを抱きつつ「仕方ないか」などと思ったのを思い出します。
アニメ化といえば、やはり大好きで読みふけっていた『いなかっぺ大将』で、主人公の風大左衛門を演じたのは、あの野沢雅子さん。
後年、『ドラゴンボール』で「孫悟空」と「ベジータ」として出会うことを、当時の僕は知る由もありません。テレビから聞こえる雅子さんの声を、ただ呑気に、楽しく聴いていました。

更新日:2022/08/24

堀川りょう 監修:堀川りょう
声優・俳優。
「名探偵コナン」服部平次、「ドラゴンボール」ベジータなど数々の声を担当。他にも「聖闘士星矢」アンドロメダ瞬、「機動戦士ガンダム 0083」コウ・ウラキ、「銀河英雄伝説」ラインハルトなど長年に渡り活躍を続ける、業界の大御所声優の一人。

声優プロダクション「アズリードカンパニー」代表取締役。
声優養成所「インターナショナル・メディア学院」学院長。

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