堀川りょう著：コラム第4回！
新時代の媒体でチャンスをつかめ

制作したアニメの「英語バージョン」も僕たちの会社では作っています。
外国向けに2カ国語仕立てにするわけですが、これはアニメに限りません。
電子マンガという媒体でも、同じ試みをしています。 タブレットの画面で見るマンガになじみのある人は多いでしょう。
僕たちは、そこに「声」をプラスしたものを開発しました。
マンガの吹き出しをクリックすると、声が出るしくみになっているのです。
これを、2カ国語で制作しています。
日本語の文字をクリックしたら日本語の音声が出る、これが通常パターン。 加えて、日本語の文字をクリックしたら英語の音声が出るパターン。
英語の文字をクリックしたら日本語の音声が出るパターン。
そして、英語の文字をクリックしたら英語の音声が出るパターン。
この計4つのパターンが、ひとつのソフトで体験することができます。

マンガファンはもちろん、英語の勉強をしたい日本人や、日本語の勉強をしたい英語圏の人々にとっても魅力的な商品ではないでしょうか。実際、すでに海外では販売されていて、好評を得ています。

この媒体は、若い声優にとっても大きなチャンスです。英語が話せれば重宝されること間違いなしです。 この商品で英語の吹き替えを担当したのはアメリカ人の声優だが、日本発の媒体なのだから、日本人だって大いに打って出ればいいのです。
語学力を磨くことも、「新時代の声優」の強力な武器となるでしょう。

日本のテレビアニメ以外の可能性についての話をここまでしてきましたが、旧来のテレビアニメにも、希望的な側面はあります。
制作側が、若手を必要とする場面が出てきているからです。
Blu-ray・DVDやグッズの売り上げが落ち、市場が小さくなってきているのは先ほど話した通りです。
以前は 潤沢にあった予算も、最近は削られがちです。 結果、人気のある声優を何人もキャスティングする、といった贅沢は許されなくなってきています。
これが、ギャラの少ない新人にとっては大きなチャンスなのは言うまでもないでしょう。 実力があって低コスト、そんな人材なら制作側は大喜びです。

若手が制作側に提供できるメリットは、それだけではありません。
人気のある声優をキャスティングしたときに困るのが、スケジュールの問題です。 人気声優は1年先、2年先まで予定が埋まっていることも珍しくありません。これが、イベント開催時にネックとなるのです。

Blu-ray・DVDやグッズで資金回収ができなくなっている今、制作側が力を注いでいるのは声優のライブイベントです。
ところが忙しいスター声優は、指定日にライブイベントに来ることができません。
ならば、未発掘の、優れた若手に来てもらおうということになるのです。
そのイベントでよいパフォーマンスを見せれば、仕事が増えていきます。
このように考えていくと、希望はこれまで以上にあると見ていいでしょう。
目まぐるしく変わりゆく声優業界へ、どんな才能の持ち主が切り込んでくるか、僕も楽しみでなりません。

これからの声優は、テレビアニメの枠を超えて活躍できなくてはならなりません。
一方で、過去も今もこれからも、時代を通じて「優れた声優」に常に求められるものがあります。
それは「演技カ」です。

声優は、テクニックさえ持っていればいいわけではありません。
役柄を理解し、ストーリーを理解し、そのキャラクターを「生きる」ことができなくてはいけません。
テクニックよりも先に、基盤として、俳優的素養が不可欠なのです。

フィクションの世界を体現するという意味では、声優も俳優も歌手も同じです。アニメも舞台も、歌うことも、受け取り手を「別世界」に引き込むもの。その世界を、どこまで体現できるかが勝負となるのです。

さらにいえば、声優は俳優や歌手以上に、演技力が必要です。
声優は、立ったままマイクの前で声を出します。きちんと立っていないと、マイクは声を拾えません。
つまり声優は、直立したままで泣いたり叫んだり、飛翔したり殴り合ったりする演技をすることになります。自分の体を動かさずに、喜怒哀楽や激しい動きを表さなくてはいけなのです。 これはとても難しい。

僕自身も、俳優から声優になったときには非常に戸惑いました。
しかしその苦労を超えて、声優ならではの演技を確立することができました。
次章では、そんな僕自身の歩みを語ろうと思います。

これからは映像・舞台・ゲーム・インターネットなど、 どんなメディアにも対応できるマルチな声優が必要とされる!
アニメの主戦場がネットになることを見越して、YouTuberとして、技術を磨く道もある!
海外での日本のアニメの人気は想像以上! これから、外国語を話せる声優は重宝される!